カルトロップ(caltrop、または caltrap, galtrop, cheval trap, galthrap, galtrap, calthrop, jackrock, crow's foot)とは、西洋で使われた撒菱(まきびし)である。
2つ以上の鋭いスパイクを持ち、常に1つは地面から上を向くような形状(例えば三角錐のように)をしており、それらを地面に撒くことで、馬、戦象、人間の部隊の足の裏に怪我を負わせる、または歩行を妨害し移動速度を下げることを狙った兵器である。特に、ラクダの柔らかい足に効果的であった。近代でも、車のタイヤをターゲットに用いられている。
語源
ラテン語のcalcitrapa(「足への罠」といった意味の語)を語源とする。フランス語のchausse-trapeも同様である。
ローマ時代の名称「tribulus」は、ハマビシ(Tribulus terrestris、ハマビシ科)の由来ともなっており、この植物の種子は足に怪我を負わせたり、タイヤをパンクさせることがある。この植物は、「caltrop」を名前の由来とするムラサキイガヤグルマギク(Centaurea calcitrapa、キク科ヤグルマギク属)と良く比べられる。
カルトロップと同様の形状を持つ水草は、Water caltrop(ヒシ) と呼ばれる。ヒシの近縁種オニビシ、ヒメビシは、忍者が撒菱(天然菱)として携帯していたとされる。通常ヒシは棘が2つで使用できないが、この近縁種は棘が4つで1つは必ず上を向くようになっている。
歴史
1世紀のローマ人歴史家クイントス・クルティウス・ルフスの著作「アレキサンダー大王の歴史IV.13.36」には、早くとも紀元前331年に鉄のカルトロップが、ペルシャのガウガメラの戦いでアレクサンドロス3世に対抗するダレイオス3世によって使われたと記述されている。
ローマでは、それらはtribulusもしくは murex ferreus,と呼ばれ、後者は「ギザギザの鉄」を意味する。 それらは紀元前53年のカルラエの戦いでも使用された。
4世紀ごろのローマ帝国の軍事学者ウェゲティウスは著作「軍事論」で鎌戦車にこう記している。
近代
第二次世界大戦では、効果的にかつ広範囲に使われた。ドイツ軍は、crowsfeetと呼ばれる2枚の板金を組み合わせて迷彩色で塗装したものを76 mmもしくは64 mmで製作した。それらを500 kgの爆弾と同じ大きさの容器に詰め、タイヤをパンクさせるため道路や飛行場の上空で投下し、空中で爆発させ散布した。
同時期、米国特殊作戦執行部と戦略諜報局によって数々の変種が作られた。開発されたものは、今日でも対車両用や、朝鮮戦争では靴底が薄かった中国軍に対しても使われた。
南米のいくつかの都市ゲリラは、「ミゲリト( miguelito )」と呼び、伏撃後の追跡を撒くために使用した。また、強盗団が車両をパンクさせ、修理のために降りた人を襲う「まきびし強盗」や、その他の犯罪に使用された事例がある。
アメリカのキャタピラー社の1990年代半ばのストライキで使用され、ピケットラインを横切る車両のタイヤをパンクさせた。会社と労働組合のどちらによるものか不明なため、互いに罵り合う事となった。スクールバスや運送業者などが巻き添え被害をこうむった。 イリノイ州の州議会は、このような器具の所有を軽犯罪にする法律を可決した。
シンボル
カルトロップには様々な象徴的な使い方があり、一般的には紋章学でチャージに使われる。
関連項目
- チェコの針鼠
- 拒馬
- パンジ・スティック
- スパイク・ストライプ
- 非致死性兵器
- ブービートラップ
- 撒菱
出典
参考文献
- Clan Drummond, a brief history, at Scot Clans
- John L. Cotter and J. Paul Hudson, New Discoveries at Jamestown, Site of the First Successful English Settlement in America, 1957 Project Gutenberg
- Lovell, Stanley P (1964). Of spies & stratagems. Pocket Books. ASIN B0007ESKHE
- 公式文書
- Ministry of Home Security (1944). Civil Defence Training Pamphlet No 2: Objects Dropped From the Air. His Majesty's Stationery Office




