エゾハコベ(蝦夷繁縷、学名:Stellaria humifusa)は、ナデシコ科ハコベ属の多年草。
特徴
茎の基部は横に這い、上部は直立して、高さは5-20cmになる。ややまばらに分枝し、細長く緑色で、無毛。葉は対生し、葉身は線状楕円形から披針形で、長さ1-2cm、幅2-4mmになり、先端はあまりとがらず、基部に葉柄がない。葉はやや多肉質で両面とも無毛。
花期は6月中旬-8月。花は白色で、径は約1cm、上部の葉腋に単生するか、茎先に数個を集散花序につけ、長さ1-3cmになる細長い無毛で緑色の花柄の先につく。萼片は5個、長卵形から広披針形になり、長さは4-5mm、先端が鈍頭、縁は膜質になり、毛はない。花弁は5個、萼片と同じ長さかまたはやや長く、深く2裂する。雄蕊は10個あり、葯は黄色になる。子房の上に3個の花柱がある。果実は卵形で長さ4-5mmの蒴果となり、宿存する萼片と同じ長さになる。種子は淡褐色で円形、径約0.8mmになり、表面は平滑。染色体数2n=26。
分布と生育環境
日本では、南千島、北海道の中部から東部、青森県の太平洋側沿岸部に分布し、海岸湿地や海岸に近い塩湿地に生育する。世界では、千島列島、サハリン、カムチャツカ半島の他、北半球の北部に広く分布する、周北極要素の植物である。
名前の由来
和名エゾハコベは、「蝦夷繁縷」の意、北海道の根室でみられることからで、矢田部良吉 (1892) による命名である。
種小名(種形容語)humifusa は、「地上に蔓延する」「地面に広がった」の意味。
種の保全状況評価
絶滅危惧IB類 (EN)(環境省レッドリスト)
(2020年、環境省)
都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は次の通り。
北海道-絶滅危急種(Vu)、青森県-最重要希少野生生物(Aランク)
ギャラリー
分類
千島列島やサハリンにも分布するが、サハリンのものは花が大きく、萼片が長さ5-6mmになる。また、日本全土でふつうに見られる、水田雑草のひとつであるノミノフスマ(蚤の衾)Stellaria alsine var. undulata に似る。同種は、エゾハコベと比べて、萼片が長さが3-3.5mmと小さく、花はより多数が集散花序につく。
脚注
参考文献
- 北村四郎・村田源著『原色日本植物図鑑・草本編II(改訂53刷)』、1984年、保育社
- 梅沢俊著『新北海道の花』、2007年、北海道大学出版会
- 矢原徹一他監修『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプタンツ(増補改訂新版)』、2015年、山と溪谷社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 4』、2017年、平凡社
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- 日本のレッドデータ検索システム
- 牧野日本植物図鑑インターネット版、高知県牧野記念財団・北隆館
- 矢田部良吉、「日本植物新名」、The botanical magazine、『植物学雑誌』第6巻第61号、p.132, (1892).




